yukimuraのメモ帳 ver.2

アルタイル号の殺人

『アルタイル号の殺人』(2024)
評価 : ★★


オレンジから発売のコマンド選択式ADV。
『探偵 神宮寺三郎』シリーズなどを手掛けた金子みつえが企画・シナリオのSFミステリーです。

木星の第4衛星の研究基地「シオン・フロンティア」は、ある日謎の爆発事故に襲われ、1年後に基地の残骸が有人宇宙船「アルタイル号」によって回収される。
そこで発見されたのは、天才宇宙工学者シオン・ミラーの遺体を収めた冷凍カプセル、それに寄り添う少女型アンドロイド・フレム、そして木星圏で発見された地球外生命体・ホープだった。
それらと乗組員を巻き込んで、やがて船内で殺人事件が起こっていく…。

プレイヤーはアルタイル号のマスターAIとなり、少女型アンドロイドのフレムと協力し、殺人事件を解決していきます。
マスターAIがフレムに指示を与えていく内容と、コマンド選択というゲームシステムがなかなかマッチしているように感じますが、残念ながらその出来は良くないです。

多くの場面では「見る」「話す」「触る」の3つのコマンドがあるのですが、大体「話す」を選んでいれば先に進めますし、他は選択した際の反応も淡白で、パターンも全然用意されていません。
場所移動や推理の場面でも、結局正解のコマンドを選ぶまで先に進めないという感じで、ゲーム性は極めて薄いです。
最後のほうに一部分岐があるくらいで、ほぼ一本道です。
まあシリアスな場面での「触る」には和みましたし、それなりに遊び心が感じられましたけどね。

なかなか雰囲気があって一定の満足度は得られるでしょうが、如何せん低価格でボリュームも短い作品です。
その短い中でSFミステリーという題材を扱うのは難しいですし、そもそもSFミステリーという題材で良い作品を作ること自体が難しいです。
短編作品ならSFかミステリーのどちらかに要素を絞ったほうがいいでしょう。

他の不満としては、開始一時間くらいはミステリーとして進むのかサスペンスとして進むのか、いまいち方向性が定まらず、読んでて落ち着かないです。
地球外生命体が登場した時は、これって実は『エイリアン』みたいなSFホラーなのか?と思っちゃいましたね。
あとは、頭の良いはずの人物が肝心な所で抜けていたり、甘い部分も見受けられました。

グラフィックは立ち絵主体で、一枚絵は少なめです。
ボイスも無いので、いかにも低価格作品という感じですね。

SFミステリーという題材に挑んだこと自体は評価したいですが、一作品としては短い上に突出した部分がないので、評価は標準の★2に留まりました。
でも私は、この作品結構好きでしたよ。
フレムはアンドロイドですが、愛嬌のある場面もあって可愛かったですし、全体的な雰囲気も良かったですね。
低価格でサクッと遊べる雰囲気ゲーをお求めなら、プレイする価値ありでしょう。