yukimuraのメモ帳 ver.2

死に逝く騎士、異世界に響く断末魔

『死に逝く騎士、異世界に響く断末魔』(2024)
評価 : ★★


バグシステムから発売のノベルゲーム。
原画・るび様、シナリオ・和泉万夜。
同ブランドから発売された『死に逝く君、館に芽吹く憎悪』と同じスタッフによる新作です。

企画・シナリオを手掛ける和泉万夜氏のファンで、前作『にくにく』も代表作には及ばなくともなかなか面白かったので、本作も発売して早速プレイしました。
しかし、結果的に本作は和泉万夜氏の作品としては随分物足りなかったです。
個人的には、このくらいなら買わなくてもよかったなという感じですね。

主人公達の住む世界に突然上位種族が現れ、その圧倒的な力で人間達を蹂躙していくという内容は前作の二番煎じですが、そこはまあ後継作なので仕方ないでしょう。
そこで本作は前作から趣向を変えて、舞台をファンタジー世界に移しています。
しかし、現実世界にファンタジー世界の住人がやってきた前作に比べれば、ファンタジー世界にまたファンタジー世界の住人が現れたところで、荒唐無稽の度合いが強いですし、それほどの面白味はありません。

特に面白くなかったのは、上位種族が主人公に料理させて、その世界の住人を食べていくという、グルメ作品の真似事が展開される中盤ですね。
ちょうど今『ダンジョン飯』というアニメが放送中ですが、あの作品も私はつまらなくて、一話観てダメだこりゃと思い即切りしました。
現実世界に生きる私達が食えもしない異世界の飯の事情など知ったことかよって感じでしたね。
本作でも、この獣人の肉が美味いとか、知るかよって感じでしたね。
中盤はどこか抜けた雰囲気ですし、中途半端にコミカルなノリもつまらなかったです。
酷い目に遭うのが主人公達ではなくモブキャラの獣人達というのも拍子抜けです。

そもそも上位種族とかいう、何だかよく解らないけど、人間を触れずに殺せる強い存在という時点であまり興味が湧きません。
敵となる対象の脅威が大きすぎても、最早そこにサスペンスや緊張感は感じません。
しかも死んでも蘇らせる能力までありますし、何でもありです。
特に最近の私は、こういう人の生死がゲーム感覚で軽く扱われる作品は全然楽しめません。
そこにはもう、生きた人間の血肉は感じられません。
正直な話、異世界に断末魔が響こうが、私には関係ないって感じです。

やはり真に優れたファンタジーは、ミヒャエル・エンデの小説や宮崎駿のアニメのように、現実に立脚した作品なんだと強く感じます。
まあ同じファンタジーでも、和泉万夜氏が手掛けた『無限煉姦』は凄く面白かったので、やはりもっと頑張って欲しいですね。

全体的には一定の読み応えがあり、一部のエンディングはなかなか良いと感じられましたが、過去の代表作ほど感情に訴えるものがなく残念でした。
トゥルーエンドも、何だか特別な感慨もなくサクッと終わった感じでした。
前作キャラも登場し、ラストで前作に繋がるので、一応前作のプレイ推奨という感じです。
まあ個人的にはそれほどの感動はありませんでしたけどね。

本作でも過激なグロ描写が多く、グロだけが目的ならそれなりに楽しめるでしょう。
しかし残念なことに、私の中で今年のグロゲー枠はもう『贄の匣庭』でお腹いっぱいになっちゃいました。
あの作品のほうが値段が安くてボリュームがありますし、そうなると本作の強みは余計に感じられませんね。

個人的な感想は以上です。
和泉万夜氏に期待するハードルは高いので、このくらいでは感心できません。
かつて『MinDeaD BlooD』や『EXTRAVAGANZA』をプレイした時のような感動や興奮は、もはや本作には見出だせませんでした。
今後の新作はとりあえず様子見しようかなって気分ですね。