yukimuraのメモ帳 ver.2

贄の匣庭

『贄の匣庭』(2024)
評価 : ★★★


Chatte Noireから発売の同人ノベルゲームで、公式ジャンルは「狂気と愛憎の伝奇ビジュアルノベル」。
途中に選択肢は一切ないので、完全に物語を読ませるタイプの作品です。

内容としては、グロ要素を多分に含んだ凌辱系エロゲであり、かつ読み応えのあるシナリオも備えた作品です。
舞台や人物の設定から、スタッフが関わった同人ゲーム『七宮村連続強姦殺人事件』との類似点も見られますね。

舞台となるのは七名家が統治する七童村。
七名家の筆頭である四季家は男子に恵まれず、村の外にある八坂家から男子を婿として迎え入れます。
主人公・八坂久朗は、八坂家の「商品」として幼い頃から殺しの訓練を受けた青年で、人としての感情が欠落した所もあります。
四季家の長女・四季叶子との交流を重ねるにつれ、徐々に人間らしさを獲得し、叶子との愛も深まっていきます。

個人的には、久朗と叶子が愛情を深めるこの序盤部分が特に楽しめましたね。
叶子は理由あって最初から久朗にベタ惚れであり、デレデレしすぎてキャラが白痴っぽくなるのは難点ではありましたが、その惚気っぷりは可愛かったですね。
最初から好感度の高いイチャラブ恋愛ゲーのような雰囲気もありました。
七名家による諍い、因習に縛られた村の不穏な空気がありつつも、序盤は幸せな雰囲気で進んでいきます。

そして、いよいよ久朗と叶子の婚姻の日となり、ここから幸せな結婚生活が始まる…と思いきや、物語は急展開を見せます。
発売したばかりの新作につき詳細は伏せますが、劇的な場面転換となり、ここからどんどんグロい展開になっていきます。

中盤以降は、都合により久朗が次々と女性キャラを犯して殺していきます。
グロシーンは過激で、流血はもちろん、臓物を抉り出す場面も多く描かれます。
最近のエロゲでここまでグロ描写が描かれた作品も珍しいでしょう。
グロ苦手な人はもちろん回避推奨ですね。

この作品、とにかく登場する人物がどいつもこいつもイカれていて、マトモな人間が全然いないです。
歪んだ嗜好を持つ狂人だったり、自分のことしか考えないようなクズだったりします。
主人公の久朗のやることも酷いですが、彼に殺される側も酷い人間が多いです。
あとは、色惚けで白痴っぽくなる女性キャラが多かったのも気になりましたね。
まあグロシーンも加わって現実離れしていて、私はだんだん宇宙人を見ているような気分になってきましたね。
とにかく嫌な人間ばかり出てくるので、中盤はプレイしていて気が滅入ります。

作品から希望や光を感じたい私にとっては、何か救いがあればいいなと思いながら読み進めていました。
終盤では、物語の重要人物の正体が明らかになり、それ自体は勘の良い人なら予想がつくものではありますが、読んでてなかなか面白かったです。
クライマックスは決して幸せではないけれど、それでも一筋の光はあるという感じでしょうか。
個人的には結構好きだったりしますね。

問題はラストであり、この作品、実はかなり勿体振った終わり方をします。
え!?それで終わり?みたいな感じでしたね。
何だか妙にホラーっぽい終わり方やら、いろいろ残った疑問点やらで、非常にモヤモヤさせられます。
黒幕については、あの人物だろうという予想はできますが、その目的やら何やらはご想像にお任せしますという感じでしたね。

いろいろ欠点も目立ちますが、なんだかんだで最後まで読み進めたくなる馬力のある作品でしたね。
グロ自体は凄く好きとまでは言えない私ですが、絵は綺麗でエロいシーンもあり、そこは気に入りました。
(個人的に五社鈴花を犯すシーンとか好きでした)
評価は中程度に留まりますが、好きか嫌いかで言えば結構好きな作品ですね。

そして余談ですが、同じくChatte Noireから発売予定の『アプリストスの円環』にも期待してます。