yukimuraのメモ帳 ver.2

DYSCHRONIA: Chronos Alternate

『DYSCHRONIA: Chronos Alternate』(2022)
評価 : ★★★★


MyDearestが開発のVRバイス向けADV。
公式ジャンルは「VRノンストップ捜査アクション/シネマチック捜査アドベンチャー」。
同じくMyDearestが開発した『東京クロノス』『ALTDEUS: Beyond Chronos』に続くVRゲームで、「CHRONOS UNIVERSE」シリーズの第3作として世界が共通していますが異なる時代を描いています。

2022年9月に『Episode Ⅰ -偽りの目覚め-』、2022年12月に『Episode Ⅱ -終局の銃弾-』、2023年7月に完結編となる『Episode Ⅲ -楽園の眠り-』がそれぞれ発売されました。
Meta Quest 2版から始まり、現在では各機種で発売されています。

人類が一度文明を失ってから約200年の遥か未来、人々の精神の平穏を保つ拡張夢によって守られる、犯罪発生率0.001%の楽園都市アストラム・クローズで、都市の創設者アルバート・ラムファード博士が殺される事件が発生する。
園都市で「起こるはずのない犯罪」を解決するため、特別監察官の主人公ハル・サイオンは「変異体」としての能力を駆使して事件を捜査していく。
そして事件を追ううち、ハルは7日後に迫る都市崩壊の未来を知ることになる…。

プレイヤーは主人公ハル・サイオンとなり事件を捜査します。
ハルには「メモリーダイブ」という特殊能力があり、左手で触れた物の過去を見ることができ、その時の状況を追体験できます。
また、追体験中に運命が分岐する場面があり、その場面に干渉することで、過去を変えることも可能です。

まず本作の素晴らしいところは、SFのギミックをVRゲームとして臨場感たっぷりに落とし込み、自分がまるでSFの世界に入り込んでいるような、他で得難いプレイ感覚を味わえることですね。
SF×ミステリーということで、まるでアイザック・アシモフSF小説の世界に入り込んでいるような感覚でした。

近未来らしい拡張現実の表現、拡張夢の世界の美しさ、メモリーダイブ時の格好良い演出、審問パートでの殺人犯の行動をトレースする場面のゾクゾクする感覚…。
SFやミステリーとして厳密に考えると甘い部分もあり、特にやたら過去を改変するのはタイムパラドックス的に問題ありですが、各場面の素晴らしい演出によりプレイ時の没入感は凄かったです。

さらに、プレイヤーの相棒であるナビゲーターロボットのリリィが可愛いです。
常に主人公に寄り添って、一緒に捜査して助言をしてくれたり、時々頭をナデナデさせてプレイヤーに癒しを与えてくれます。
暗いストーリーの作品ですが、その中にあって清涼剤となる存在でした。

また、作中で悪い結末を迎えると時間が巻き戻るので、過去作同様に本作はループものになります。
過去作では、ループによる周回前提の作りでありながら、同じ場面を繰り返すのにスキップ出来ないので、非常にストレスが溜まりました。
また過去作と同じような構造だったら嫌だなと思いきや、本作ではループによる繰り返しの場面が極力少なく作られており、そのストレスはかなり軽減されています。
ループものの欠点である同じ場面の繰り返しは苦痛なので、さすがに制作者も学習したようで、ここは好印象でしたね。

そして移動形式ですが、過去作から進化して自由にフィールドを歩き回れるようになりました。
VRゲームとして気になるのはVR酔いの問題ですが、本作では上手い具合にこの問題が解消されています。

VRゲームでは、通常のスムーズ移動ではVR酔いしやすく、ポイント間のワープ移動ではVR酔いしにくいです。
他のVRゲームでは、どちらか一方の移動形式しかない場合が多いですが、本作ではいつでも両方の移動形式を使い分けられます。
そのため、長距離を移動する際はワープ移動で素早く進み、短距離を移動する際はスムーズ移動で細かく探索できます。
この移動形式により、本作は長時間プレイしてもVR酔いしにくく、実に快適でしたね。

上記のように、VRゲームとしてのSFギミックの表現の素晴らしさ、プレイの快適さから、プレイ当初はVRによる新時代のADVの代表作が生まれたと感じました。
序盤は凄く興奮しましたし、『Episode Ⅰ』単体ならば★5の評価です。

しかし、残念ながら右肩下がりに面白さが下がっていき、『Episode Ⅱ』は★4、『Episode Ⅲ』は★3という結果になりました。
「CHRONOS UNIVERSE」シリーズは、どれも最初が面白くて最後はイマイチという感じで、今回も竜頭蛇尾な印象でしたね。

特に完結編の『Episode Ⅲ』は、RPGでいうほぼラストダンジョンだけという内容で、昔の『FF』の最終ディスクみたいな感じでしたね。
ひたすら時計塔を上に登っていくのですが、謎解きメインでストーリーは薄く、しかもレーザーを避けるアクション部分が多く、一体何をやらされてるんだ?という気持ちになりました。
まあクライマックスのリリィの健気さには感動しましたね。

総合では、全エピソードの面白さの中間をとって★4になります。
『Episode Ⅰ』プレイ時は凄く興奮しました。
このシリーズはどれも終盤イマイチになるので、もっと頑張って欲しいです。
現状ではVR向けのSF・ミステリー系ADVという貴重な作品なので、プレイする価値は十分にあると思います。