yukimuraのメモ帳 ver.2

ジャックジャンヌ

『ジャックジャンヌ』(2021)
評価 : ★★★★


ブロッコリーから発売のNintendo Switch用ゲーム。
公式ジャンルは「少年歌劇シミュレーションゲーム」。
歌劇学校を舞台にした乙女ゲームです。

最近は乙女ゲー熱が再燃してきたので、Switchで遊べる乙女ゲーで評判が良さそうな作品を何本か見繕ってきました。
なかなか思ったほど楽しめない作品が多かったですが、その中では本作が特に面白かったですね。

「少年歌劇シミュレーションゲーム」とあるように、ゲーム部分では主人公の能力値を上げていく育成SLG要素があります。
と言っても、この部分はそれほど本格的なものではなく、実は内容も単純です。
6つの能力値が6人の攻略キャラに対応していて、各キャラのベストエンドを見たいなら、それぞれのキャラに対応した能力値をひたすら上げていけばいいだけです。
育成SLG部分よりも、物語を読み進めるノベルゲーム部分のほうが比重は大きいです。
そのため、実際はちょっと遊べる要素も含んだノベルゲームという感じですね。

そして、歌曲のレッスンと、本番の公演での歌唱パートでは、ミニゲームとしてリズムアクションが挿入されます。
音ゲーが苦手な私にとって、プレイする前はちょっと抵抗がありました。
しかし実際プレイしてみれば、難易度NORMALなら私でも普通にSSランクが獲れるくらいなので、よっぽど音ゲーが苦手でない限りは大丈夫だと思います。

原画を手掛けたのは『東京喰種トーキョーグール』などで知られる漫画家・石田スイで、他にも原作・シナリオ・劇中歌の作詞を兼任しています。
さすがに漫画家が手掛けた作品だけあって絵が綺麗で、特に一枚絵は綺麗でしたね。
ただし、立ち絵と一枚絵で画風が違って、立ち絵の方は一枚絵ほど良いとは思えませんでした。
特に、作中で長い割合を占める日常パートではあまり一枚絵が出て来ず、ボリュームの割りに一枚絵が少なく感じたのが残念でした。
個人的には、立ち絵も一枚絵のような綺麗な画風で統一して描いてもらって、一枚絵の枚数をもっと増やしてくれれば良かったですね。

そしてストーリーですが、あらすじは以下の通り。
演劇好きな少女・立花希佐は、兄が通っていた名門「ユニヴェール歌劇学校」に憧れていたが、男性しか入学できないため諦めていた。
しかし、校長の計らいにより女性であることを隠して入学試験を受けるよう薦められ、見事合格し入学を許可される。
入学後に校長から言われた在籍し続けるための条件は三つ、女性であることがバレないこと、他の生徒たちと良好な関係を築くこと、学期末のユニヴェール公演で主演すること。
希佐は憧れのユニヴェールに居続けるため、仲間たちと共に研鑽を積んでいく。

男子だけが入れる歌劇学校に、女子である希佐が男子として入学するという導入部から、エロゲの女装男子ものの逆バージョンみたいな感じかな?とプレイ前は想像していました。
しかし、舞台となる歌劇学校には希佐以上に女の子らしい女形の美少年もいるので、希佐が男の格好をしていても何ら違和感はないですし、女バレしそうになるハプニングの描写も少ないです。
主人公は男装女子ではありますが、それは作品の一要素に過ぎないという感じでしたね。

本作は乙女ゲーで、攻略対象の男性キャラとのEDもありますが、恋愛要素はそこまで強くありません。
本作の肝となるのは、仲間たちと絆を深め、時にライバルとして競い合いながら、共に舞台を成功させるという目標に向かって頑張っていく、熱い青春要素です。
歌劇を題材にしたノベルゲームで、その描写を主として、きちんと描かれた作品って意外に少ないと思います。
本作は歌劇に関する描写が非常に丁寧に扱われ、内容も熱い王道路線で、幅広いユーザーが楽しめつつ、一定以上の満足度のある作品に仕上がっています。
各キャラEDの他にも、主人公にスポットを当てたEDもあります。
なので、あまり乙女ゲーであるとか気にせずに、熱い青春ものとして、男女問わず楽しめオススメできる内容でしたね。

欠点としては、ボリュームがあり丁寧な内容であるが故に、日常パートで結構中弛みが発生します。
さらに、育成SLG部分が単調なので、余計にダルさに拍車を掛けています。
一周が長い作品なので、周回が面倒に感じてしまいましたね。
これならば、いっそのことSLG要素を除いて、完全なノベルゲームにしても良かったですね。
あとは、公演パートでもうちょっと盛り上げるような演出が欲しかったです。

もう一つ大きな不満として、主人公の希佐にもボイスが有るのは嬉しいですが、どうせならテキスト欄の横に顔も表示して欲しかったです。
せっかく可愛くてキャラも立っているのに、一枚絵でしかその姿を拝めないのは寂しかったですね。
最近プレイしたオトメイトの作品では、主人公の顔は表示されるけどボイスが無いのが不満でしたが、本作ではそれとは逆の不満がありましたね。

総合では、乙女ゲーの中でも男女問わず幅広い人が楽しめる作品です。
歌劇を題材にした熱い青春要素に惹かれるなら、プレイして損はないでしょう
つい最近、続編の制作も発表されたので、気になる人はプレイしては如何でしょう。