yukimuraのメモ帳 ver.2

【推しの子】

『【推しの子】』(2023)
評価 : ★★★★★


赤坂アカ横槍メンゴの漫画が原作のTVアニメ。
春アニメで唯一、最初から最後まで楽しめた作品で、重要作品なので個別に記事を作りました。

人気漫画が原作のアニメですが、最初に制作会社が動画工房に決まった時は、正直どうなんだろ?と思いましたね。
CloverWorksに主力スタッフを奪われ、最近の動画工房は低調だったので、大丈夫かな?と思ってましたが、その予想に反してクオリティ高くガッチリと仕上げてきました。
非常に丁寧なアニメ化で、動画工房の底力を感じましたね。

本作について語るには、どうしてもその内容に触れないといけない為、本記事にはネタバレが含まれます。
未見の方でこれから観る予定のある方は、この記事を一旦閉じてください。
そして、自身で作品をチェックしてから感想を読んでもらいたいと思います。
まあ私の考えでは、こうした作品の感想は、まず作品をチェックしてから読むものだと思っているので、記事を開かなくても評価・採点は分かるようにしています。
私の評価を参考にしている人がいるかは解りませんが、私一個人による一つの目安としてもらえれば幸いです。

まず、本作の第1話は90分の長尺で、劇場で先行公開もされました。
作品全体でも、この第1話が特に面白く、私の本作の★5という評価も、この第1話の素晴らしさによるところが特に大きいです。

産婦人科医の主人公・ゴローは、自分の患者である12才の若さで亡くなった少女・さりなの影響でアイドルオタクになる。
そんな彼の元に、何と推しのアイドル・星野アイが妊娠した状態で現れる。
ここが第一の波乱。

子供を産むこともアイドルを続けることも諦めないアイの人間性に改めて惚れ直したゴローは、彼女の主治医として内密出産を手掛ける決意をする。
いよいよアイの出産日という時に、アイのストーカー・リョースケが現れ、何とゴローは殺されてしまう。
ここが第2の波乱。

その衝撃も覚めやらぬ内に、第3の波乱。
何とゴローは、アイの息子・愛久愛海(アクア)に生まれ変わってしまう。
双子の妹である瑠美衣(ルビー)は、ゴローの患者・さりなの生まれ変わりで、二人とも前世の記憶を引き継いでいるが、自分たちの前世の関係には気付いていない。
『【推しの子】』というタイトルはそういう意味だったのか!と、思わず膝を打つ見事な流れです。

その後もアイは、出産の事実を隠しながらも、アイドルとして目覚ましい活躍を見せる。
二人の子も、母親のアイを応援しながら、すくすくと成長していく。
アイの人気は急上昇し、遂には東京ドームでのライブを行うまでになる。
しかし、ライブ前にリョースケが自宅に押し掛け、何とアイはアクアとルビーの目の前で殺されてしまう。
第4の波乱、主役と思われた人物の突然の退場…。
我々視聴者も唖然とします。

その後リョースケは自殺、アクアとルビーはアイの芸能事務所の社長夫妻の子として成長していく。
アクアは、リョースケにアイの情報を流した黒幕が存在し、その人物こそが自分とルビーの実の父親であると推察する。
アイの交流関係から、実の父親は芸能界の人間だと考え、アクアは自ら芸能界に足を踏み入れ、実の父親を探し出し復讐することを誓う。
ここは視聴者にとって、第5の波乱と言えましょう。
この作品の本質は、実はアクアの復讐劇と父親を探るミステリーであったのか!と判明するのです。
こうして幼年期は終わり、衝撃の第1話が幕を閉じます。

本当に巧いこと作ったものだと感心します。
本作を構成する要素の一つ一つは、他の作品でも見られるものですが、それらを組み合わせることで全く新しい作品を作り上げています。
結果的に、本作に類似した作品というのは殆んど見当たらないんじゃないでしょうか?
オリジナリティは抜群でしょう。

それにしても、母親でありアイドルという存在を体現したアイの人物像が素晴らしく、1話で死なせてしまうには、あまりにもったいないほどに魅力的な人物です。
彼女はその後も、その場には存在しないけれど、アクアたちの心の中に居続ける女神的な存在として、作品全体のキーパーソンとなります。

プロローグとしての掴みは完璧でしたが、以降の物語も面白いです。
その後は、芸能界活動を主旋律とし、復讐劇・ミステリーは通奏低音として扱われます。
復讐劇が主旋律となるのは、まだ先という感じでしょう。
何にしても、先が楽しみな作品です。

その後も、芸能界の舞台裏、メディア、SNSなどの問題を扱い、「現代の基礎知識」的なマニュアル作品としても興味深く観られました。
こうした内容の真実度は、一般人の私には解らないですが、作品の受け手がそれらしく楽しめるだけの本当らしさがあれば、それで良いでしょう。
その点、本作は十分に楽しめましたね。

第1話に次いで面白かったのが、恋愛リアリティショー編ですね。
ヒロインの黒川あかねは特に好きですね。
そんな彼女が見舞われる悲劇には、胸が苦しくなりました。
とりあえず、彼女のような真面目で愚直な人間にとって、メディア・SNSは毒にもなる、それだけでも言及すべきでしょう。
結果的に、アクア達の手助けにより救われて、ホッとしましたね。

個人的には黒川あかね派ですが、重曹ちゃんこと有馬かなも可愛く、作品全体で見てもヒロイン力が強いです。
アイを除けば、この二人の魅力が強く、双璧と言えましょう。
惜しむらくは、双子の片割れのルビーは、強力なヒロイン群の中では相対的に影が薄くなっていることでしょう。
最終話のライブは可愛かったですけどね。

斬新な設定、先の気になる展開、強いキャラの魅力、動画工房一軍によるクオリティの高いアニメ化、文句なしに面白い作品でした。
第2期も非常に楽しみです。
作品の内容にマッチしたYOASOBIのOPを始め、楽曲も良曲揃いです。