yukimuraのメモ帳 ver.2

とつくにの少女

『とつくにの少女』(2022)
評価 : ★★★


ながべ原作の漫画をアニメ化したOVA
2019年にコミックスの付属品として短編のOVAが発売され、その短編が好評だったことから、2022年にコミックス番外編の付属品として作られた長編のOVAが本作です。

まず始めに目を引くのが、その映像の美しさですね。
緻密な線描の絵本をそのままアニメにして動かしている感じで、これだけでも一見の価値があります。
毎年多くのアニメが作られていますが、どれも似たような絵柄だったり、低品質な粗製乱造だったりで、観る気も起こらないような作品が多いです。
そんな中、一見して他とは異なる雰囲気を放ち、一段と美しい本作のような作品の存在は、それだけでも有難いです。

しかし、こうした作品の評価は映像コンクールとは違うわけで、映像が美しければ即高評価というやり方はまずいです。
代表的な例として『AKIRA』を挙げましょう。
あの作品の映像は凄いですが、物語がちんぷんかんぷんな作品を名作アニメとして自信を持って一般人にオススメ出来るでしょうか?
作品は複数の要素で成り立つものなので、その一要素が優れているだけでは駄目なのです。
本作にも同じようなことが言えます。

内容としては、ちょっぴりダークな要素を含んだファンタジーですが、物語はぼんやりして何だかよく解らない感じです。
ファンタジーなんだからいいだろう、と言う人もいるかも知れませんが、ファンタジーだからこそ骨格の部分をしっかり作らないと、フワフワした作品に終わってしまいます。

原作を読んでいれば違うのかも知れませんが、当然の事ながら、アニメを観る人全てが原作を読んでいるわけではありません。
作品の評価は単体で為されるべきであり、アニメ単体を観て理解できないのなら、それはアニメの作りが良くないのです。

また、少し話は変わりますが、原作ファンがアニメの感想を書く時にしがちな、原作との比較論だけでアニメを論じたつもりになるのも駄目でしょう。
私のようにアニメとして何が良くて何が悪いのかを知りたい人間にとっては、何の参考にもならない場合が多いです。
比較したくなる気持ちも分かりますが、アニメを原作の付属物、ファンアイテムとして考えるだけじゃ駄目でしょう。

というわけで、本作単体では「映像の美しい作品」という評価に留まりますが、その映像に関しては大変魅力的なので、なかなかに捨てがたい作品でしたね。