yukimuraのメモ帳 ver.2

恐竜ガーティ

『恐竜ガーティ』(1914)
評価 : ★★★★★


最近のアニメに感想を書いてて楽しい作品がなかなか無いので、ここで気分を変えて、これからはアニメ史的に重要度の高い作品の感想も、少しずつですが試験的に書いていこうと思います。
私自身、アニメの歴史に詳しくないので、そちらの勉強も兼ねて、という感じです。
思い付くままに書いていくので、時系列がいろいろ前後すると思いますが、大昔の作品の感想も書きつつ、たまには最近の作品だったり、違う時代の作品だったり、変化を付けて飽きないように続けていこうと思います。

大昔のアニメの感想は、最近のアニメにしか興味ない人にとっては退屈でしょうが、アニメ全般に興味がある人には是非観てほしいと思う作品を中心に扱っていくので、興味ある方は読んでいって下さい。
手始めに、100年以上前の歴史的価値の高いこの作品からいきます。

漫画家でありアニメーターでもあるウィンザー・マッケイが手掛けたアニメ映画。
もし私が古今東西の名作アニメを紹介する本を作るとしたら、そこで扱う最古の名作アニメは、おそらく本作になると思います。
ウィンザー・マッケイの作品では、自身の漫画をアニメ化した『リトル・ニモ』(1911)、実際の事件の様子を描いたドキュメンタリー・アニメ『ルシタニア号の沈没』(1918)も代表的ですが、やはり本作を一番の代表作として挙げたいと思います。

本作はアニメ映画で、主役は恐竜のガーティです。
しかし、作品の半分以上を占める中盤までは実写パートであり、作者であるウィンザー・マッケイ自身が出演しています。
序盤、仲間たちと博物館を見学していたマッケイは、仲間の一人から「いくらマッケイ君でも大昔の恐竜を動かす事は出来ないだろう」と言われ、それに対してマッケイは「出来るとも!」と大見得を切ります。
中盤はアニメーションの制作風景が映し出され、それから数ヶ月後のパーティで完成したアニメをお披露目する場面までが実写パートです。

終盤からアニメパートになり、ようやく主役のガーティが登場します。
セルの無い当時に、一万枚の作画を全て手作業で描いたとのことで、約5分間のアニメパートは滑らかな動きをしており、100年以上経過した現在の我々にも、その凄さは伝わってきます。
同時代の人は、このアニメーションにかなり驚いたのではないでしょうか。
しかし、本作の素晴らしさはそれだけでは語れないでしょう。

本作の真の価値は、恐竜のガーティという可愛らしく個性的なキャラクターを生み出したことにあります。
最初もじもじしながら現れ、その後も木を食べたり、芸を疲労したり、立ち上がって踊ったり、湖の水を飲み干したり、愛嬌を振り撒くその一挙一動がとにかく可愛いです。
もちろん本作以前にもアニメは存在しますが、ガーティはその可愛さ、ユニークさから、個性を備えた最初のアニメーションキャラクターとして評価されています。

評価は★5。
アニメ史的価値を考慮した評価ですが、ガーティの可愛さは現在でも十分通用するでしょう。
実写のマッケイ氏がアニメの世界に入り込む幕切れも圧巻だと思います。