yukimuraのメモ帳 ver.2

嘘から始まる恋の夏

『嘘から始まる恋の夏』(2023)
評価 : ★★★★


プレイしたゲームの感想もちょっとずつ書いていこうかと考えています。
継続的にやっていけるかは分からないので、断言はできませんがね。
とにかくやっていきましょう。

サークル・LYCORISによる同人ゲームで、公式ジャンルは「百合ビジュアルノベル」。
「夏」「青春」「百合」を題材にしたノベルゲームで、途中に選択肢は一切ないので、完全に一本の物語を読ませるタイプの作品です。

扱われる題材も私好みですが、何より絵が綺麗で惹かれたので絵買いしましたね。
パッと見でメインキャラの栞里は、黒髪ロング×黒タイツ×CV:石見舞菜香で私好みのキャラだったので、絵+声優買いといったところです。
そんな感じなので、特に事前に内容をチェックせず、絵と声優目当てで楽しめればいいという考えでやり始めましたが、結果的に予想以上に楽しめましたね。

まずやり始めて、キャラがヌルっと動き出したのは驚きました。
立ち絵も一枚絵も動きがあり、目パチ、口パク、体全体の動きも加わり、元々綺麗な絵だけど更に魅力が増してましたね。
他の多くの美少女ゲームでは、商業作品でも絵に動きが無かったり、立ち絵は動いても一枚絵は動かなかったりと、いつまでも旧態依然とした作品があり、視覚的な楽しみが少ないのは不満に感じます。
いつまでも90年代や2000年代から変わらない作り方では駄目でしょう。

さらに嬉しかったのが、キャラの髪型・服装がこまめに変わり、その分の絵のパターンも多く用意されていたことですね。
この手の作品のお約束では、私服が一種類しか用意されていない場合も多いですが、普通に考えれば、皆が漫画やアニメのキャラみたいに、いつも同じ服ばかり着ているのはおかしいでしょう。
特に女性なら、細かく髪型や服装の変化があるのが現実的でしょう。
本作は百合ゲーで、登場する女性キャラの見た目も場面毎によく変化し、視覚的にも楽しめました。

グラフィックは予想以上で、個人的に満足でしたね。
他の商業作品も、本作を見習って欲しいです。

残念なのは、やはり同人ゲーなのでシステム周りが弱いことですね。
特に、せっかく絵が綺麗なのだから、せめてウインドウ透過はできるようにしてほしかったです。
私は綺麗な絵を見たいがために、こまめにウインドウを消していたので面倒臭かったですね。
ちなみに私が美少女ゲームをプレイする時は、ウインドウ透過率→100%、メッセージ速度→最速、改ページでボイスを停止しない、これらはまずコンフィグでいじります。
皆さんはどうですか?

テキストは丁寧で、メインの二人だけでなく、周囲の人々の人物描写もよく描けていました。
現実路線でありつつ、恋の四角関係、家族の問題など、見た目は爽やかだけど結構重い内容も含んでいるので、純粋に明るい百合作品を求めている人には合わないですが、個人的にはこういう路線のほうが好みですね。

メインの百合カップルとなる薫と栞里ですが、薫は好意を持っている深玲先生を、栞里は目標としている兄を、それぞれの想い人への気持ちを断ち切るため、協力関係を築きます。
栞里と兄の想い出の地を薫たちと訪れ、想い出を上書きしていく「想い出の地巡り」。
最初こそ同病相憐れむ関係の二人でしたが、次第に惹かれ合い、互いを恋愛対象としていきます。

私はメインの「想い出の地巡り」はとても良いと感じましたね。
過去に引きずられながらも、それぞれが自身を見つめ直し、少しずつ前を向いていく。
ロマンチストの私にとって、なかなかこういうお話は好きです。
ロマンはあっても甘すぎないのが良いです。

それだけに、終盤の栞里の父親絡みの騒動はちょっと気に入らないという感じです。
それまでの重い内容を含みながらも爽やかなお話から比べると、作品のトーンが重くなりすぎます。
美少女ゲームの個別ルートにありがちなヒロインの問題解決のようで、型に落ちるという印象でした。
ちょっと栞里に不幸属性を盛りすぎましたね。

「想い出の地巡り」が一区切りとなる第11話辺りをクライマックスにして良い感じに終わったほうが、作品としての純度は高くできたでしょう。
その後の彼女たちの交流も美しく胸を打ちますが、ちょっと残念でしたね。
青春要素をメインにし、家族の問題はサブに留めるくらいがちょうど良かったですね。
総じて、ストーリーは良い部分と悪い部分が混在しているように感じました。

キャラ的には、やっている内に莉久が一番好きになりましたね。
彼女は友達思いの良い子です。
もし本作が分岐ありのノベルゲームだったら、栞里×莉久のルートとかも見てみたかったですね。

総じて満足度は高く、個人的にもやって良かった作品ですね。
絵が気に入って、重い内容を含んだ百合ゲーでもイケるという方にはオススメします。