yukimuraのメモ帳 ver.2

あまつそらに咲く

『あまつそらに咲く』(2023)
評価 : ★★


同人サークル・studio ailaによるノベルゲーム。
選択肢により各ヒロインEDに分岐し、最後にTrueEDがあります。

高校最後の夏、一つの島を舞台にした青春ものということで、パッケージから雰囲気の良さそうな作品です。
結果的に、雰囲気は良いんですが、いろいろ勿体なく、更に同人ゲー的な弱さも感じてしまいました。

サークルの前作『after grow』もプレイしましたが、その時は「何だか昔の泣きゲーみたいだな」という感想を抱きました。
そしてサークル2作目となる本作ですが、そこにファンタジー要素が加わり、ますます昔のKey作品のような感覚が強くなりましたね。
どうやらスタッフのメンバーもKey作品が大好きなようで、なるほどという感じでしたね。

物語が進むにつれ、作品全体の謎が明かされていくのですが、その謎に関しても何だかKey作品を思い出させます。
正直な話、かつてのKey作品やその類似作品をいろいろプレイしてきた人にとっては、「またこういう系?」という感覚が強いでしょう。
それに加えて、一枚絵は少なく、ボイスもなく、システムなども同人レベルなので、余計にも古臭い作品という印象を強めています。

そんな感じで、個人的には高く評価できない作品ですが、かと言って、私は別に本作が嫌いという訳ではありません。
いろいろ言いつつも、萌那の妹の雛那のエピソードは、私はちょっと涙ぐみながら読んでいました。
昔の私は作品でそこまで泣くことはありませんでしたが、年を取って涙脆くなった最近の私は、誰かが頑張っている姿を見るだけで泣きそうになります。
特に子供や動物が頑張っている姿を見ると、ほぼ確実に泣いてしまいます。
そう、今の私を泣かせること、それ自体に大した技術は要らないのです。

ここで作品の評価の仕方の話になりますが、多くの人にとって「感動した!」という事実があれば、それはその人にとって名作と言えるのでしょう。
しかし私はそうは思わず、その感動がどの程度のものなのかを考えます。

確かに私は本作で感動する場面もありました。
しかし、もっとストーリーやグラフィックやサウンドなどを頑張れば更に感動できたのに、勿体無いなぁと考えます。
頑張れば100%の感動を与えられたのに、その感動も50%未満に留まってしまった。
そうした技術的な面を語るのが私のやり方であり、その点で本作には足りない部分が多く、作品としては大きなロスがあります。

例えば、作品のストーリーに関して、情熱的な長文感想を書いている人をよく見かけます。
確かにそうした文章を書く熱量は凄いと思いますが、作品が持つ文学的な側面だけに言及した文章は、高級な感想文であっても、作品の優れた批評にはなり得ません。
特に同人は商業作品に比べて弱い部分が多いので、それらを度外視した感想文は批評とは言えないです。

同人ゲーマーの多くは、そうした洗練されていない荒削りな部分も含めて、同人ゲーが好きなんでしょう。
その気持ちは私も十分に理解できます。
しかし、あまりにも無条件で盲目的な、同人ゲー最高!同人ゲー万歳!という考え方には、私はあまり賛同できません。

私は商業も同人も、どんなジャンルでも関係なく、一つの作品として同じ土俵で評価します。
私の本作のイマイチな評価には、嫌な気分になるファンの人もいるかもしれません。
しかし、それは「全ての作品を平等に評価したい」という私のスタンスによるものであり、決してそこに悪意はありません。
自分と他人で考えが違っても全く構わない訳ですし、例え考えが違っても、その意見に耳を傾けることが肝要だと、私はそう考えます。

途中から個人的な作品の見方の話をくどくど語ってしまいましたが、私の気持ちが少しでも伝わっていれば嬉しいです。