yukimuraのメモ帳 ver.2

八剱伝

『八剱伝』(2024)
評価 : ★★★


IRODORIから発売、公式のジャンルは「戦国ザッピング絵巻」。
複数視点による群像劇スタイルのノベルゲームです。

前作『桜花裁き』が面白かったIRODORIの新作なので、今回もきっと楽しめるだろうと期待を込めて購入しました。
内容としては、『南総里見八犬伝』をベースにアレンジした戦国もので、4つの視点を切り替えながら読み進めていくことになります。

まず、前作『桜花裁き』でADV要素を加えてきたIRODORIの新作で、さらに公式のジャンルに「戦国ザッピング絵巻」とあるので、ザッピングを活かしたゲーム性に期待してプレイする人も多いのではないかと思います。
しかし、残念ながら殆ど一本道で、選択肢も正解or即バッドエンドのあっさりしたものなので、大したゲーム性はありません。
結局のところ、4つの視点をある程度好きな順番で読める、という程度のゲーム性しか無いので、自分の手で歴史を動かしていくような、ゲームならではの楽しさはありません。
これからプレイする人で、ゲーム性に期待している人は要注意ですね。

そんな感じでゲーム性は極めて薄いのですが、群像劇スタイルのノベルゲームと割り切ってプレイすれば、十分に楽しめる作品だと思いますね。
戦国を舞台に、様々な目的を持った多数のキャラが登場し、複数視点で入り乱れる様は面白いです。
こうした群像劇スタイルのノベルゲームで良い作品って意外に少ないように感じるので、他ではなかなか無い特徴として印象に残りました。

そんな本作のもう一つの特徴は、魅力的なキャラが多いことですね。
特に戦国が舞台ということで、戦う女性キャラが多く登場します。
戦うヒロインが大好きな私にとって、この点は満足でしたね。
個人的には、幻八と華野が特に好きでした。

ストーリーの出来は、視点によってばらつきは有りますが、中盤までは十分に面白かったです。
しかし、終盤はどうにも気に入りませんでした。

終盤は、今まで別れていたメインキャラが集結し最終決戦となりますが、4組それぞれが因縁のある悪役と戦います。
各キャラがそれぞれの想いをぶつけ合いながらのバトルが連続するのですが、何だか延々と説教を聞かされているようで、個人的には有り難くなかったです。
しかも、悪役はどいつも私怨で動くスケールの小さい人物で、どうにも魅力に欠けましたね。
それに加えて、悪役を倒した後に、その悪役の過去の場面が挿入されるのは、さすがにしつこく感じました。

悪役にもこういう事情がありました…というお話は好きな人は好きなんでしょうが、悪役は憎たらしければ憎たらしいほど良いと考える私にとっては、どうにも甘過ぎます。
私なんかは、悪役ならウダウダ言わず世界征服くらいやってみせんかい!と思っちゃいましたね。
上記のような不満があり、終盤は少々興醒めという感じでしたね。

ヒロイン毎の個別ルートとエロシーンは、前作同様に、クリア後の番外編扱いとなっています。
本編ではストーリーに集中させ、その後もヒロインとの恋愛を楽しみたい人は、こちらもどうぞという感じですね。

グラフィック・演出は、前作同様頑張っているのは感じられますが、前作からの大きな進化が感じられず、ちょっと物足りなかったです。
OPや次回予告のムービーも多く頑張っているのは感じますが、個人的には演出面の方をもっと頑張って欲しかったですね。

中盤までは面白かったですが、終盤の弱さが気になるので、総合評価は★3にします。
それでも、戦国が舞台の多数のキャラが登場する群像劇、今現在のエロゲ業界で、こういう他のメーカーが作らないような作品をきちんと作り上げてくれたことは評価したいです。