yukimuraのメモ帳 ver.2

僕の好きな人の好きな人は、女装した僕でした

『僕の好きな人の好きな人は、女装した僕でした』(2024)
評価 : ★★★★


ensemble SWEETから発売のノベルゲーム。
途中の選択肢により、各ヒロインのEDに分岐します。

同日発売の『八剱伝』のついでにと軽い気持ちで購入しましたが、いつの間にか本作の方を夢中になってプレイしていました。
評価もお気に入り度も断然こちらが上ですね。
予想以上に面白かったです。

これまでensembleと姉妹ブランドのensemble SWEETは、「女装男子」や「お嬢様」を題材にした作品を多く手掛けてきました。
今回も主人公・春樹が女装男子で、ヒロイン・清佳がお嬢様なので、ensembleらしい作風と言えますね。

内容はずばりタイトルの通りなんですが、あらすじをざっくり紹介します。

主人公・蛍乃春樹は、世界的に有名なファッションデザイナーの姉・千鶴の専属モデル「春日蛍」として、幼少期から家計を助けるために女装をし続けています。
海外から日本に帰ってきた春樹は、幼い頃に「蛍」として一緒に遊んでいたお嬢様・清佳と再会します。

ここからタイトルにあるように、ややこしい関係になっていきます。
春樹は清佳のことが好きなのですが、清佳は春樹が女装した「蛍」のことが好きなのです。
更にややこしいことに、男嫌いな清佳は、春樹のことを「蛍」を誑かす悪い男であると、勝手に早とちりします。
弁解しようにも後の祭りで、事情を知る姉の千鶴も面白がって茶化すわ、清佳お付きのメイドの愛に厳しく監視されるわで、春樹は散々振り回されていきます。
こうして「僕」と「彼女」と「女装した僕」の奇妙な三角関係が始まります。

まず本作は、ヒロインの清佳が主人公の「春樹」と彼が女装した「蛍」を別人だと思い込み、擬似的な三角関係が形成されるという、基となる設定の時点で面白いです。
そうした勘違いを基点にドタバタが繰り広げられ、大いに笑わせてくれます。
清佳が「蛍」のことを溺愛し「春樹」を毛嫌いするという、本当は同一人物なのに真逆の対応をされる様も面白い。
清佳に男としての自分を好きになって欲しい春樹は、清佳に嫌われながらも必死にアプローチしていくことになります。
以上のように、他の女装ものとは一味違った面白味により、最初から一気に惹き込まれました。

可愛い女装男子の春樹/蛍、暴走お嬢様の清佳、着せ替え好きな姉の千鶴、毒舌メイドの愛、個性的なキャラによる軽妙な掛け合いが楽しかったこともあり、日常シーンもだれることなく読めました。
あまり騒がしいギャグを好まない私ですが、本作は波長が合って気に入りましたね。
シナリオライター・泰良則充氏のテキストは気に入りました。

笑いで楽しませつつも、メインとなる恋愛も良く出来ていました。
終わってみれば、主人公が女装男子であることを上手く扱い、丁寧に描かれた恋愛ものでしたね。
春樹と清佳、二人が行き着いた常識にとらわれない愛の形は感動的でした。

そんな感じで、メインの清佳ルートはかなり満足できました。
しかし、残りの千鶴と愛のルートはかなり短く残念でした。
清佳ルートは標準的なボリュームがありましたが、他のルートは本当にオマケという扱いでビックリでしたね。
ミドルプライスであることを考慮しても、このボリュームの無さはコストパフォーマンス的に問題でしたね。

メインの清佳ルートだけなら満足ですが、他の二人のルートに期待した人はガッカリでしょう。
特に、毒舌メイドの愛が良いキャラで好きだったので、愛ルートはもっと頑張って欲しかったですね。

総合では、女装男子を扱った変則的な恋愛もの、軽妙なキャラの掛け合いを楽しみたい人には、十分オススメできる作品です。
メインの清佳ルート以外はボリューム不足なので、そこは要注意ですけどね。
予想以上に面白く、個人的にもお気に入りの作品です。