yukimuraのメモ帳 ver.2

マツリカの炯-kEi- 天命胤異伝

『マツリカの炯-kEi- 天命胤異伝』(2024)
評価 : ★★★★


アイディアファクトリーから発売のNintendo Switch用ノベルゲーム。
途中の選択肢により、各キャラのEDに分岐します。

アイディアファクトリーのブランド・オトメイトによる乙女ゲームです。
オトメイトはコンシューマーの乙女ゲーブランドの代表格ですが、私自身はそれほどプレイしていません。
何故本作を購入したかと言えば、絵が綺麗で雰囲気が良さそうだったからです。
直感的に軽い気持ちで購入しましたが、結果的に当たりでしたね。

内容としては、中華風のファンタジー世界での波乱万丈のロマンスを描いた作品です。
舞台となる世界は、月下ノ国と呼ばれる王国を中心に、主役の少女・ナーヤが属するマツリカ族、雪山で暮らす白狼族などの民族で構成されています。

まずプレイし始めて、作品世界の構築がきちんと成されていると感じましたね。
それぞれの地域で生きる人々の文化や風習が丁寧に描かれており、作品の土台となる設定部分がしっかりしています。
ファンタジー作品で特に重要となる設定がきちんと描かれていること、これにより作品世界へすんなり入り込むことができました。
独自の用語を理解するための辞書もきちんと完備されています。

序盤に短めの共通ルートがあり、そこでの選択で各キャラのルートに分岐します。
序盤からナーヤが暮らすマツリカ村に事件が起こり、ナーヤは村から出て行くことを余儀なくされます。
どのキャラと行動を共にするかによって、王国の宮廷勤めになったり、雪国に嫁入りしたり、砂漠の国で旅したり、舞台が変わり、ナーヤの生き方も変わっていきます。
他のノベルゲームのような、無駄に長い共通ルートやダラダラした展開もなく、序盤から物語が動くので、最初から集中して楽しめました。

攻略キャラは6人で、そのうちの3人にはルートロックが掛かっており、他のキャラを攻略することで解放されていきます。
各キャラのルートを攻略していく内に、次第に世界の真実、物語の全容が解ってくる構成になっています。

各キャラは、癖がありながらも血肉の通った人物として描かれていて、プレイする内に好感が持てることでしょう。
攻略キャラでは、ルヲが特に好きでした。
女性キャラでは、主役のナーヤはもちろん、小蝶ちゃんも可愛かったですね。

ストーリーも、ルヲルートは冒険要素が強くて、特に私好みでしたね。
「アルセーヌ・ルパン」シリーズみたいなロマンチックな冒険譚が大好きな私にとっては、まさに好みのど真ん中でした。
ルヲルート単体ならば、★5を進呈したいです。

難を言えば、私は途中のルヲルートを特に楽しんだため、その後にプレイしたルートが少々物足りなく感じてしまいました。
特に、締めのフェイルートの終わり方は物足りなかったです。
あとは、各キャラの視点から物語を多角的に捉えることで、次第に物語の全容が明かされていき、中盤までは面白かったのですが、終盤になると少々飽きが来てしまいましたね。

各キャラのルートは、ハッピーエンドだけでなくバッドエンドもある程度の分量が用意されているので、そこは好印象でしたね。
男性向けよりも、乙女ゲーのほうがバッドエンドをしっかり描いている印象がありますし、プレイヤーの選択により良い展開にも悪い展開にもなるほうが、ノベルゲームの作りとしては正しいと思いますね。

グラフィックは綺麗で、立ち絵では目パチ口パクもあり、人物の衣装も中華風ファンタジーらしく華やかで美しいです。
一枚絵も綺麗ではありますが、立ち絵のように動きがあるのは極一部で、Switchの横長の画面に押し込んだ構図で、ちょっと窮屈に感じたのは残念でしたね。
中華風のサウンドも良かったです。
男性プレイヤー目線で言えば、主役のナーヤにも声は欲しかったですけどね。

システム面では、次の選択肢へジャンプ、好感度やフローチャートの画面、イベント回想モードもあります。
プレイが快適で攻略しやすく、クリア後もいつでも好きな場面を読み返せて、男性向けのノベルゲームよりも欲しい機能が充実しています。
逆に男性向け作品にあるような、次の音声まで再生する機能が無かったり、やや短所もありましたね。

全体的に高水準で、良質なノベルゲームでした。
本作ならではの強みがもう少しあれば、★5でもよかったですね。
あとは、情事の場面もあるので、そこはエロゲとして見たかったです。
何にせよ、最近の乙女ゲーをあまりプレイしてなかったこともあり、久しぶりに良い乙女ゲーに出会えて嬉しかったです。
(最近の乙女ゲーで他に良い作品があれば、情報提供お願いします!)