yukimuraのメモ帳 ver.2

TO・RA・WA・SE ~囚われの偽妃が夢みる初夜~

『TO・RA・WA・SE ~囚われの偽妃が夢みる初夜~』(2023)
評価 : ★★★★


だーくワン!から発売のノベルゲーム。
公式ジャンルは「TSして女の快楽に溺れるADV」。
途中の選択肢により、いくつかのEDに分岐します。

大まかなあらすじは以下の通り。
東欧の古城を改築したホテルにやって来た主人公は、そこで彼女の雪にプロポーズし成功するが、雪は仕事の都合で急遽帰国する羽目となる。
一人残された主人公はホテルで眠りにつくが、夢の中で悪魔と名乗る双子の少年少女に出会い、二人から快楽を刻み込まれる。
その後、自分が女となり、古城が隆盛を極めた中世の時代に招かれるという、奇妙な夢を見る。
夢から覚めた主人公は、自分の肉体が夢と同じ女性に変わってしまったことを知る。
何とかしようと試みるも、眠りにつく度に夢の世界で女の快楽を植え付けられ、目覚める度に女体化が進んでいく。
果たして主人公は、夢から逃れ、男に戻れるのか…。

という内容で、ジャンルは男の主人公が女体化するTSものです。
本作で特筆すべき特徴は、徐々に女体化していく主人公の心理描写が非常に丁寧に描かれていることです。

主人公は男でありながら女の体にされ、夢の中で女の快楽を覚えさせられ、現実の肉体まで女体化していきます。
夢と現実を行き来するほど女体化が進んでいき、止める術はありません。
最初は「俺は男だ!」と叫びながら、徐々に女体化が進行していく現実に絶望し、遂には女であることを受け入れるしかないという、そうした精神の変化が段階的に描かれます。

それと同時に、肉体の女体化により、男では到底得られなかった女の強い快楽を植え付けられ、手放し難い快楽に溺れていく様も丹念に描かれます。
最初は「男とセックスなんてホモじゃねえんだぞ!」と粋がっていた主人公が、女性の肉体を開発されていき、遂には屈強な男に犯されて喜び、自ら進んで奉仕する様子など、何とも言えないエロスを感じました。

こうした女体化による肉体的・精神的な変化の過程が、優れた描写で描かれることにより、エロシーンの実用性もより一層増していると感じます。
心は男で体は女、そんなTSものだからこその、男性視点のエロとも女性視点のエロとも違う、独自の雰囲気のエロシーンを堪能できました。

以上のように、シナリオとエロは満足できましたが、メインのストーリーに関しては消化不良でした。
途中まではなかなか良さそうで、ラストの幸せそうな様子自体も良かったのですが、いろいろすっ飛ばして強引に終わらせた感じでしたね。
結局、魔女裁判はどうした?って感じでしたし。
この辺はどうやらシナリオライターの変更など、いろいろな事情があったみたいですね。
あとは、値段の割りにボリュームが少ないのも難点でした。

TSもので重要となる心理描写と、それにより感じられるエロス、これらを味わうだけでも十分にプレイする価値のある作品だと思います。
このジャンルが好きな人はプレイ必須でしょうし、そうでない人もきっと新しい世界を開拓できることでしょう。